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本好きが憧れるもう一つの空『丘の上の小さな本屋さん』

丘の上の小さな本屋さん BOOK
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この本で最も刺さった言葉。

書店をやっていてひとつ気がついたのは、著者崇拝はそこまで一般的ではないということ。ポール・オースターやゼイディー・スミスの新作を心待ちにしている読者は、じつは少ない。それよりも、忘れられない本を読んだ、けれども著者の名前は思い出せない、という人の方がずっと多いのだ。読者が求めているのは物語であって、誰が書いたかには頓着しない。気晴らしになったり、共感できたり、どこか別の場所へ連れていってくれる物語。好まれるのは、誰も傷つけない物語、傷を癒し、信じる心を呼び覚まし、美への憧れをかきたてる物語だ。

出典:『丘の上の小さな本屋さん: イタリアの180人の村で開いた書店の記録』アルバ・ドナーテ 著 栗原俊秀 訳 河出書房新社

そうそう。本が好きというのは、こういうことなのだ。ひとにおすすめの本を紹介するとき、著者より、タイトルより、まず何がよいのかその中身を伝えたい。それがつまり自分という人間の自己紹介につながるのである。

この本には本好きなら憧れずにはいられないもう一つの空が描かれている。本屋さんのある村の美しい風景、村人のやさしさ、そして何より日記を書いたオーナー女性の真摯な生き方が、読む人をたおやかな世界へといざなってくれる。田舎で本屋さんを開きたくなる素敵な日記である。

たぶん日本語訳の功績も大きいと思われる。読みやすく、心の機微が丁寧に表現されており、素直にこころに入ってくる。

なお日記のそれぞれの最後に、その日注文した本が記されている。ほとんどが知らないタイトルで、自分の蔵書にあったのは数冊程度。新しい本を探すときのリストとしても重宝しそうだ。

本好きなら1冊手元に置いておきたい“人生の備品”である。

 

※この記事はamazonレビューへの投稿を加筆したものです。

 

【対象作品】

『丘の上の小さな本屋さん: イタリアの180人の村で開いた書店の記録』
アルバ・ドナーテ 著
栗原俊秀 訳
河出書房新社

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